相談事例Q&A

　当法人は医療法人ですが、前事業年度は社会保険診療報酬の課税の特例を適用した所得計算をして申告しました。ところが、このほど、この特例の適用を受けるよりも通常の収支計算によった方が有利であったことが判明しました。そこで、更正の請求をしたいと考えていますが、いかがでしょうか。なお、税務署から指摘を受けたわけではありませんが、実は当法人の経理担当の不注意から、多少、修正申告で増額すべきものがあります。そこで自発的に修正申告をし、その申告書において（１）その増差税額と（２）上記の社会保険診療報酬の課税の特例による税額と通常の収支計算による税額との差額とを相殺して修正申告書を提出することはどうかと考えていますが、併せてご教示下さい。

　貴法人は、前事業年度に係る法人税の確定申告において、社会保険診療報酬の特例を選択して所得計算をして申告したのであって、更正の請求の要件である、当該申告書に記載した課税標準等又は税額等が「国税に関する法律の規定に従っていなかった」場合、「当該計算に誤りがあった」場合のいずれにも該当しないので、原則として、更正の請求は認められないと解されます。 なお、法律行為の要素に錯誤がある意思表示は無効ですが、本件の場合は、動機の錯誤であり、法律行為の要素に錯誤があったことに当たらないと考えられます。もっとも、他に修正申告をすべき増差税額があり、概算経費選択の意思表示の誤りが本件確定申告書ないしはその添付書類から明らかである場合には、その増差税額と差引きができる範囲内に限り、社会保険診療報酬の特例から通常の収支計算への選択替えも認められると考えられています。

国税通則法　第２３条第１項第１号　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　租税特別措置法　第６７条　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　民法　第９５条　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　最高裁平成２年６月５日判決　民集４４巻４号６１２頁　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「税研」Ｖｏｌ．２５‐Ｎｏ．４（１４９号） ２０１０．１　５１～５４頁