一部未分割の場合の小規模宅地等の特例について
[令和8年8月1日現在法令等]
Q. 質問
甲は、同居の長男乙に甲の居住用建物とその敷地である宅地イを相続させ、二男丙に賃貸用建物とその敷地である宅地ロを相続させる旨の公正証書遺言を作成しました。その後丙が死亡し、公正証書遺言の変更がされない状態のまま甲が死亡しました。当該公正証書遺言に丙が死亡した場合の予備的遺言はありませんでした。
甲の相続人乙と丙の子丁との間で、申告期限までに遺産分割協議が終わらない見込みです。特例対象宅地等である宅地イと宅地ロの小規模宅地等の特例の適用関係について教えてください。
A. 回答
1.一部未分割における小規模宅地等の特例
特例対象宅地等が分割されている場合には、当該宅地等を誰が取得するのかが確定し、当該宅地等について小規模宅地等の特例が適用されたときの減額割合を判定することができるため、本特例の適用を受けるものとして選択することができる状態にあります。このことは、特例対象宅地等が遺言対象となっている場合であっても異なることはありません(東京地判平成28年7月22日・税資第266号順号12889)。
したがって、未分割申告において、一部分割済の財産の中に小規模宅地等の特例対象宅地等が含まれている場合で、当初申告において当該特例対象宅地等を選択特例宅地等として申告しなかったときは、当該特例対象宅地等は小規模宅地等の特例を受けることはできないと考えられます。
ご質問の事例では、宅地イは分割済の財産となるので、当初申告において選択特例宅地等として小規模宅地等の特例の適用を受けて申告をします。宅地ロは当初申告において未分割財産と考えられますので、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出し、乙と丙による協議分割後に選択特例対象宅地等として限度面積要件を満たす範囲で小規模宅地等の特例の適用を受けます。
2.特定財産承継遺言後の受益相続人の死亡
特定財産承継遺言(「相続させる遺言」)がされた後に、当該遺言により遺産を相続させる者としてその名を記されていた者(受益相続人)が遺言者の死亡以前に死亡した場合に、その遺言の効力が代襲されるかについては、「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることはありません(最判平成23年2月22日・民集65巻2号699頁)。
したがって、甲が丙に相続させるとした当該条文は無効になるものと考えられ、賃貸用建物とその敷地である宅地ロについては、乙と丁による遺産分割協議を経て申告等の手続きを進めていくことになります。
なお、遺贈についても、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じることはありません。
参考条文等
租税特別措置法第69条の4 民法第994条
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