相談事例Q&A

個人版事業承継税制適用にあたり注意すべき事項

[令和8年8月1日現在法令等]

Q. 質問

 個人事業を営んでいた父から長男(後継者)が事業用財産を相続して事業を承継する場合に、個人版事業承継税制の適用を受けるか否か検討する際に、特に注意すべき事項は何ですか。

A. 回答

 個人版事業承継税制は、対象事業用資産に係る相続税が猶予・免除されるというメリットはありますが、適用を受けるか否かを判断するにあたり、もっとも注意すべきことは、

個人版事業承継税制を適用すると、小規模宅地等の特例の対象となる事業用宅地について、後継者はその特例の適用を受けることができないため、小規模宅地等の特例の減額相当額について相続税の課税価格の合計額が上昇し、後継者以外の相続人の相続税負担が増加する

 ということです。
 個人版事業承継税制の適用を受けた場合の相続人全員の相続税額と、個人版事業承継税制の適用を受けずに小規模宅地等の特例の適用を受けた場合の相続人全員の相続税額は異なりますが、ケースによっては、小規模宅地等の特例の適用を選択したほうが有利になる可能性があります。

1.後継者が個人版事業承継税制を適用した場合
 (1) 後継者が個人版事業承継税制を適用すると、後継者が相続した事業用宅地の評価額に対し小規模宅地等の特例が適用されないため、小規模宅地等の特例が適用される場合と比較して課税価格の合計額が増加します。
 (2) そうすると課税価格の合計額に対応する相続税率が高くなり、後継者だけでなく、その他の財産を相続した後継者以外の相続人の相続税負担も増加します。
 (3) (2)により相続税の負担が増加しても、後継者は承継した相続財産について納税猶予・免除を受けることができますが、後継者以外の相続人は小規模宅地等の特例を受けた場合より高い相続税の負担が求められます。
2.個人版事業承継税制を適用せず小規模宅地等の特例を選択した場合
 (1) 後継者が相続した事業用宅地に、小規模宅地等の特例が適用されれば課税価格の合計額は上記1.と比較して大幅に減額されます。
 (2) そうすると課税価格全体に対する相続税率は低くなり、後継者だけでなく、その他の財産を相続した後継者以外の相続人の相続税の負担も低下します。

 上記のように、小規模宅地等の特例を適用して相続税の申告をする場合、後継者にも税負担が発生しますが、相続税の課税価格の合計額が低下するため、後継者と後継者以外の相続人の相続税額を合計した全体の相続税額のほうが、個人版事業承継税制を適用した場合より少なくなるケースがあり得ます。
 どちらを選択するかは、被相続人の財産内容や相続人の数、遺産分割の合意内容などによっていずれが有利になるか不利になるか異なりますので、適用する前に十分試算する必要があります。

参考条文等

租税特別措置法第70条の6


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