買収した子会社(被買収法人)における繰越欠損金の控除適用の注意点
[令和8年8月1日現在法令等]
Q. 質問
当社は3年前にA社を買収により完全子会社としました。A社は買収以前から繰越欠損金があり、買収後も2年間は赤字となっていました。しかし今期経営改革を断行した結果、黒字化する見込みです。このA社の繰越欠損金は、A社の当該事業年度の法人税の計算上控除できますか。
A. 回答
原則として控除可能ですが、特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越控除の不適用の規定により、過去の欠損金が控除できなくなるなど、注意すべき点があります。貴社の場合、買収から5年以内であるため、この規定に抵触しないか慎重な確認が必要です。
この規定は、繰越欠損金を目当てとした租税回避目的の企業買収を防ぐためのものです。過半数の株式を取得するなどして会社を支配した日(特定支配関係が生じた日。以下「支配日」という。)から5年を経過する日までに、後述するような一定の事由が生じた場合、支配日前から一定の事由に該当した日の属する事業年度の前事業年度までに生じた欠損金については、繰越控除ができなくなります。
一定の事由とは、以下の5つです。
①休眠会社の稼働:支配日直前に事業を行っておらず、支配日以後に事業を開始した場合
②事業の廃止と多額の資金調達:旧事業のすべてを廃止(または廃止が見込まれる)し、旧事業規模(売上金額等)の概ね5倍を超える資金の借入れ等を行った場合
③債権の取得と多額の資金調達:貴社が第三者からA社の特定債権を取得しており、旧事業規模の概ね5倍を超える資金の借り入れ等を行った場合
④組織再編・解散:上記①~③に該当する状況で、適格合併を行うか、残余財産が確定した場合
⑤役員・従業員の交代と新事業の急拡大:特定支配関係が生じたことに基因して、支配日直前の役員(社長その他政令で定めるものに限る)全員が退任し、かつ旧従業員(支配日直前に当該法人の業務に従事していた使用人)の20%以上が退職した上で、旧従業員が実質的に従事しない新規事業の規模が、旧事業規模の概ね5倍を超える場合
ご質問の場合、支配日から5年以内(3年目)であるため、A社が休眠会社であったか、または多額の借入れを行っていないか、あるいは上記⑤に注意を要します。
経営改革により、買収前の役員や従業員の大規模な退職がなかったか、さらに旧従業員が関わらない新規事業が急拡大していないか確認してください。もしこれらの点が当てはまる場合には、支配日前から今期の前事業年度までの繰越欠損金がすべて控除できなくなります。
繰越欠損金の引継ぎや使用制限というと、合併などの「組織再編税制」ばかりを注目しがちです。しかし、本件のような単なる株式買収であっても、その後の事業展開やリストラ(経営改革)の進め方次第では、A社の当該事業年度における法人税の計算上繰越欠損金の控除ができないという重大なリスクが潜んでいる点にご注意ください。
参考条文等
法人税法第57条の2 法人税法施行令第113条の3
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