相続空き家特例における買主が取壊す場合の解体費用の取り扱い
[令和7年4月1日現在法令等]
Q. 質問
父の居住用家屋(昭和55年築の戸建住宅)及びその敷地を相続しました。相続後は当該家屋を一切使用せず、相続後2年目(令和6年1月1日以降の譲渡)に第三者へ譲渡しています。
売買契約では、建物付き現況渡しとしたうえで、譲渡年の翌年2月15日までに買主が当該建物を取り壊すことを条件としており、解体費用300万円は買主負担と明記されています。売買代金は9,900万円です。
この場合、租税特別措置法第35条第3項に規定する相続空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除の適用に当たり、当該解体費用300万円を「譲渡対価」に含めて1億円以下要件を判定する必要がありますか。また、本特例の適用は可能でしょうか。
A. 回答
1.相続空き家特例の適用要件
本特例の主な適用要件は、次のとおりです。
⑴特例対象者
被相続人が相続開始直前まで1人で居住していた家屋及びその敷地を相続又は遺贈により取得した相続人であり、当該家屋が区分所有建物でなく、かつ昭和56年5月31日以前に建築されたものであること。
なお、被相続人が相続開始直前に老人ホーム等に入所していた場合であっても、要介護認定等を受けており、入所前の家屋が事業用又は第三者の居住用に供されていなかったときは、入所直前の状況により判定する。
⑵譲渡対価
譲渡対価が1億円以下であること。
⑶譲渡期間
相続後に当該家屋及び敷地を使用せず、相続開始の日から起算して3年目の年末までに譲渡すること。
⑷譲渡形態
譲渡時から譲渡年の翌年2月15日までに、被相続人居住用家屋が新耐震基準に適合するか、又は全部が取り壊されていること。
⑸譲渡先の制限
生計一親族又は同族会社への譲渡については適用がない。
⑹他の特例との関係
自己居住用財産の3,000万円特別控除等との併用は可能であるが、相続税額の取得費加算の特例との併用はできない。
2.特別控除額
相続人1人当たり譲渡益から3,000万円を控除します。ただし、相続人が3人以上の場合には、1人当たり2,000万円を限度とします。
3.譲渡対価1億円の判定
この特例で判断が難しいのは「譲渡対価が1億円以下」の判定です。
本件では、解体義務及び費用負担のいずれについても契約上買主に帰属しているため、当該解体費用300万円は譲渡対価には含まれないと解されます。
租税特別措置法通達35-19では、契約において売主が負担すべきものとされている測量費用又は家屋の取壊費用等を買主が負担した場合には、その名目のいかんを問わず、実質において譲渡対価に含める旨を定めています。
しかし、本件では、契約上、家屋の取壊しは買主が自分の責任で行うものとされ(契約において現況渡しである)、その費用も買主負担と明示されているため、租税特別措置法通達35-19の適用による取壊し費用の加算の必要はありません。したがって、譲渡対価は売買代金9,900万円に限定されます。
4.空き家特例の適用の可否
本件は令和6年1月1日以降の譲渡に該当するため、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに買主によって家屋が全部取り壊され、その旨の証明書(市区町村長による確認)を得ることで、本特例の適用が可能となります。この場合、契約書には「現況有姿での引渡し」であること、及び「買主の責任と負担において取り壊すこと」を明確に区分して記載しておく必要があります。
参考条文等
租税特別措置法第35条第3項 租税特別措置法通達35-19
税務相談室



