相談事例Q&A

経理担当者の横領により過少申告となった場合における「正当な理由」の有無

[令和7年4月1日現在法令等]

Q. 質問

 私は中小企業の経営者ですが、この度、税務調査を受け、過少申告との指摘を受けました。ところが、この過少申告は、当社の経理担当社員による売上金の横領があり、この事実に上司も私も気付かないまま税務申告をしたものです。したがって、会社はいわば被害者ですが、過少申告加算税が課されない「正当な理由」を主張することができるのでしょうか。

A. 回答

 貴社の場合、会社は被害者であっても過少申告となったことについて「正当な理由」があるという主張はできません。「正当な理由」とは、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合を意味します。経理担当者による売上金の横領の場合は、これには該当しないと考えられます。なぜならば、貴社の業務に関して社員が他人に損害を加えた場合と同様の事情にあり、会社が補助者又は代理人として社員を使用して業務を営む以上、民法第715条(使用者等の責任)の趣旨から、それに関して生じた他人(国税の場合であれば、国)の損害(本件の場合は、行政上の措置である過少申告加算税)を会社が賠償する責任があることは当然です。さらには、もし、その社員が会社の帳簿の改竄等をして横領していたのであれば、隠ぺい仮装ありとして重加算税が課される懼れもあります。被害者である会社には、きつい結論ではありますが、判例及び裁決の傾向はこのようです。もちろん、貴社はその社員に対して、その加算税相当額の損害賠償請求権を有することとなります。

参考条文等

国税通則法第65条民法 第715条                                                       最高裁平成17年(行ヒ)第9号同18年4月20日第一小法廷判決・民集60巻4号1611頁                                 「税研」Vol.24‐No.5(144号) 2009.3 52~54頁


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