清算型包括遺贈と課税関係―公益財団法人への全財産遺贈
[令和8年8月1日現在法令等]
Q. 質問
遺言者は、不動産および預貯金からなるすべての財産を公益財団法人(A財団)に包括遺贈する旨の遺言書を作成しました。遺言書には「遺言執行者はこれらの財産を換価し、遺言執行に係る必要経費(税金・諸費用等)をすべて相続財産から控除した上で残額をA財団に交付する」旨が定められています。被相続人には相続人が存在します。この場合の課税関係はどうなりますか。
A. 回答
1.清算型包括遺贈の法的性質
ご質問の遺言(以下「本遺言」という。)は、①全財産(不動産+預貯金)を対象とし、②遺言執行者が換価し、③税金を含む必要経費を控除した上で、④その残余を受遺者に交付するという構造をとります。これは、学説上「清算型包括遺贈」と呼ばれる包括遺贈の一形態に該当します。包括受遺者は民法第990条により「相続人と同一の権利義務を有する」ことから、A財団は本遺言において包括受遺者の地位を取得します。
2.相続税の課税関係
A財団は、公益財団法人であり、法人は相続税の納税義務者となる個人に該当しないため、同財団への遺贈による財産取得については相続税が課されません。
なお、相続税法第66条第4項(持分の定めない法人への遺贈)の適用が問題となりますが、ご質問の場合には、全財産を公益目的で遺贈するものであり、「遺贈者の親族等の相続税の負担が不当に減少する結果となる」という同項の要件を通常は満たさないため、同項の規定は適用されません。
3.みなし譲渡に係る所得税
不動産を法人(A財団)に遺贈した場合、被相続人が不動産を、死亡時の時価で譲渡したものとみなされます。これに伴い被相続人に譲渡所得に係る所得税が課されます。これは包括遺贈であっても同様です。
なお、公益法人等への財産の贈与・遺贈に係るみなし譲渡の非課税特例の適用が考えられますが、ご質問の場合には、「換価して現金を交付する」換価遺贈であるため、財産を公益目的事業に直接供することという要件は満たしません。したがって、この特例の適用は受けられず、所得税の課税対象となります。
4.準確定申告と納税義務の承継
相続(包括遺贈を含む。)があった場合には、相続人(包括受遺者を含む。)は、被相続人に課されるべき国税を納める義務を承継します。ご質問の場合には、A財団が包括受遺者として全財産(100%相当)を取得するため、みなし譲渡に係る所得税(被相続人の準確定申告分)の納税義務はA財団が承継します。
A財団が全財産の包括受遺者であれば、A財団の承継割合が100%となり、相続人の承継額はゼロとなります。
5.準確定申告の申告期限と納税義務
年の中途で死亡した者に係る所得税の確定申告(準確定申告)については、「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」に申告・納付しなければならないことになっています。
ご質問の場合には、A財団が納税義務を承継することから、A財団は相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に、不動産のみなし譲渡に係る所得税(被相続人分)について準確定申告を行い、納付する義務を負います。
参考条文等
民法第990条 相続税法第12条第1項第3号、第66条第4項 所得税法第59条第1項、第125条 租税特別措置法第40条 国税通則法第5条 昭和50年11月4日付直資3-11ほか(公益法人等に対して財産の寄附があった場合の譲渡所得等の非課税取扱い)
税務相談室



